社会人司法試験受験生の雑感

司法試験(&予備試験)についての雑感を残すためのブログです。平成30年予備試験と令和元年司法試験を受験しての雑感を残しています。

令和元年司法試験論文式試験の雑感(その2)【行政法】

 続いて行政法です。こちらもおそらく70~75点程度の点数は付いているものと思われる科目です。

 

1.答案に書いたこと

 設問1については、違法性の承継が認められるかについて原則論(法的安定性を重視すべきであるから違法性は個々の処分毎に判断すべきであり違法性の承継は原則として認められない)を書いたうえ、例外論として①法的効果の同一性(先行の処分と後行の処分が、結合して一つの法律効果を実現させるものであるか)と②争う機会の有無(被処分者に争う機会が与えられておらず違法性の承継を認めないと酷か)の2つの要件を充足すれば違法性の承継が認められるという法解釈を示しました。当てはめについては詳細は覚えていないのですが、なるべく問題文の条文を多く引きながら①も②も認められないから本件では違法性の承継は認められない旨書きました。

 設問1は規範定立(法解釈)では多くの受験者が正確に書けるものと思ったので、当てはめを充実させることを意識しました。

 設問2(1)については、争点訴訟ではなく実質的当事者訴訟と書いてしまったのですが、「無効確認訴訟の補充性要件について、当事者救済の見地から狭く解するべきではなく、実質的当事者訴訟と無効確認訴訟を比較して、後者の方がより直接的で適切な救済手段であると言える場合には補充性要件を満たし訴訟要件を満たす」というような規範を端的に示したうえで、設問1と同じくなるべく多くの条文を引用しながら当てはめを厚く書くように意識しました。具体的には、本件権利取得裁決は多数の関係者に影響を及ぼす処分であって、実質的当事者訴訟の場合は紛争当事者の間で相対的な解決をもたらすに過ぎないのに対し、無効確認訴訟の場合は対世効を有しており関係者の間で一挙に紛争を解決することが出来ることから、無効確認訴訟の方が直接的で適切な救済手段といえる」というようなことを書きました。39条で事業認定の告示があった日から1年以内に裁決をすることが要求されていることから、一度無効確認訴訟で無効が確定すれば再度の裁決が行われることを防ぐことが出来るという点についても言及しました。

 設問2(1)についても、設問1と同様に規範定立(法解釈)では多くの受験者が正確に書けるものと思ったので、当てはめを充実させることを意識しました。

 設問2(3)については、お決まりの裁量論からの出題でしたので、まずは裁量の有無を条文の文言+処分の性質から論証して、その後に裁量権の逸脱濫用があるかについて判断過程審査の形で規範定立しました。当てはめにおいては、問題文にわざわざ①②③と分けて書いてあったので、それを流用して①②③の3つに分けて反論も含め記載して裁量権の逸脱濫用がある旨書きました。

 設問2(3)については定番の出題であったため、当てはめで書き負けないように出来る限り問題文の事情を書き写して、反論もなるべく説得的になるように書いたうえでそれに反駁を加えるということを意識しました。

 

2.本試験を受けて感じたこと

 原告適格や処分性といった定番の分野から出題されず、特に設問2(1)の無効確認訴訟の補充性要件について検討させる出題はやや変化球気味かなと感じました。また、これまでは2時間という時間の制約に比してやや処理量が多すぎるのではないかという印象がありましたが、今年は問題数が減少したこともあってか、試験を受けている際も比較的余裕をもって書き終えることが出来ました(もっとも、来年以降も問題数を少なめに維持するのかは分かりませんが)。

 行政法については、規範定立(法解釈)の面ではあまり差がつかず、当てはめで如何に問題文の事情を上手く使えるかで勝負が決まる科目だと思います。特に誘導文が比較的丁寧に誘導してくれるので、必ず誘導文に乗る形で答案を書きあげる必要があります。こうした科目特性を踏まえると、規範定立(法解釈)については勝負の土俵に上がる前提として十分に理解した上で、如何に問題文の事情をふんだんに盛り込んで上手く使うかについて、日頃の学習においても常に意識することが重要であると思います。したがって、判例学習においても規範部分のみならず当てはめがどのような形でなされているのかに注目して学習することが肝要であるでしょう。