社会人司法試験受験生の雑感

司法試験(&予備試験)についての雑感を残すためのブログです。平成30年予備試験と令和元年司法試験を受験しての雑感を残しています。

令和元年司法試験論文式試験の雑感(その1)【憲法】

 

 予備試験では憲法C行政法Eだったので、リベンジを果たせた形の公法系科目です。私にとっては意外でしたが、結果的に系別で見て最も出来が良かったことになります。憲法単体で70~75点程度の得点だと思われます。それでは以下に雑感を記載します。

 

1.答案に書いたこと

 立法措置①は何を書いたのか細かくは覚えていません。自己の意見をSNSで発信する自由(21条1項)について自己実現・自己統治の価値を有する重要な権利であり、その真偽の判定も微妙なものであるから規制をするにしても慎重な検討がある旨記載のうえ、虚偽表現規制について「公共の利害に関する事実」という限定だけでは現行刑法や公職選挙法がさらに限定を付しているのに比して規制対象が過度に広範であり違憲である、仮に過度に広範であるとはいえないとしても「虚偽の表現が流布されることによる社会的混乱を防止する」という立法目的が主観的・抽象的であるにもかかわらず一律禁止という強度な規制手段を用いることは目的と手段の均衡を欠き違憲である、というようなことを書きました。

 立方措置②については、SNS事業者が「SNS利用者にとっての表現のプラットフォームを提供する自由」(21条1項)を有するという点につき、博多駅事件を援用(報道の自由は知る権利に奉仕するから重要であるというくだりとパラレルに考える)したうえで、そのような自由は営業の自由(22条1項)として保障されるにすぎないという見解への反論を記載しました。そのうえで、選挙の公正を守るという目的について、戸別訪問事件における伊藤補足意見(いわゆる選挙ルール論)を論じた上で、これを採らない、すなわち審査基準を緩やかにするべきではないと論じました。そのうえで、「SNS利用者にとっての表現のプラットフォームを提供する自由」の重要性に鑑みても「選挙の公正を守る」という立法目的もまた重要であるから、「選挙運動の期間中及び選挙の当日」に限定して「選挙の公正が著しく害されるおそれがあることが明白な表現」のみを規制対象とするのであれば、目的と手段の均衡を欠くとはいえず合憲である、というようなことを書きました。

 最後に、問題文の「フェイク・ニュース規制委員会(法案第15条,以下「委員会」という。)は,SNS事業者に対し,当該表現を削除するように命令することができ,
SNS事業者がこの命令に違反した場合には,処罰されることとなる(法案第9条第2項,第26条)。この委員会の命令については,公益上緊急に対応する必要があることが明らかであるとして,行政手続法の定める事前手続は不要であるとされる(法案第20条)。」という点について、成田新法事件の判断基準を援用した上で、適正手続とはいえず31条に反し違憲である旨をサラッと書きました。

 

2.本試験を受けて感じたこと

 今年度も「あなた自身の意見を述べなさい」という出題形式でしたが、「その際,A省からは,参考とすべき判例があれば,それを踏まえて論じるように,そして,判例の立場に問題があると考える場合には,そのことについても論じるように求められている。また,当然ながら,この立法措置のどの部分が,いかなる憲法上の権利との関係で問題になり得るのかを明確にする必要があるし,自己の見解と異なる立場に対して反論する必要があると考える場合は,それについても論じる必要がある。」という条件も課されていました。

 したがって、上記問題文の条件に沿うように解答する必要がありますが、私の場合は判例への言及について、主に①博多駅事件の援用②戸別訪問事件の伊藤補足意見への反論③成田新法事件の援用という3つを答案に明示的に記載しました。また、自己の見解と異なる立場への反論としては「SNS事業者の自由は営業の自由として保障されるにすぎない」という見解を論じ、それに対して反論を加えました。

 憲法単独で何点付いたかは正確には分かりませんが、低くとも70点程度は付いているものと思われるので、上記の記載が出題の趣旨に沿うものとしてそれなりに評価されたものと思料されます。仮に来年以降もこうした出題のされ方が続くのであれば、当然ながら受験生の対策もこれまで以上に進んでいくものと思われますので、判例の立場に適切に言及すること及び異なる立場への反論を適切に行うことが高得点を取るうえで必須になるのかもしれません。

 私は演習書としては『憲法演習ノート』1冊を繰り返し読むようにしていました。また、判例百選も繰り返し読むようにしていました。演習書を読むにしても判例を読むにしても、規範のみを暗記しようとするのではなく「どういった事案で裁判所においてどのような判断が下されたのか」を理解するよう意識し、そのうえで「問題文の事案とどの判例の事案が最も近そうか」「問題文の事案と判例の事案でどの点が異なるのか」といった点について注意しつつ、学習を進めていくことが必要になるものと考えられます。前者については判例百選等を用いて正確に理解するようにし、後者については何らかの演習書を用いながらいわゆる「判例の射程」を意識する練習をすることになるのでしょう。