社会人司法試験(予備試験)受験生の日記

公認会計士として働きながら、勉強の記録を残すためのブログです。勉強と関係無い話も時々します。コメントございましたら司法試験の話題に限らず何でもどうぞ。

平成30年度司法試験予備試験口述試験再現(1日目刑事)

主査:それでは事例を読み上げますから、よく聞いてください。Aが、Vの自転車を見つけて鍵を壊して盗みました。そして、Aは自分の家の庭にVの自転車を放置しました。翌日、VはたまたまAの庭に自分の自転車があったことに気づき、勝手に持ち帰りました。この場合Vには何らかの犯罪が成立しますか?

私:窃盗罪が成立します。

主査:窃盗罪の構成要件は何ですか。

私:他人の財物を窃取したこと。不法領得の意思。そして故意・因果関係が必要です。

主査:Vは自分の物を取り返しただけなのになんで窃盗罪が成立するの?

私:窃盗罪は現に存在する平穏な占有自体を保護法益とする犯罪であるため、仮に自己の所有物であっても、窃盗罪の成立は否定されません。

主査:それって条文に根拠があるっけ?

私:はい、刑法242条です。

主査:あなたは「平穏な占有」とおっしゃいましたけど、窃盗罪の保護法益は「平穏な占有」なんですか?

私:あ、えーっと、そうですね、「平穏な」というのは不要で、「事実上の占有」ということかと思います。

主査:じゃあ、判例は窃盗罪の保護法益についてどう言っているか、知っていますか?

私:判例も同様に「事実上の占有」を保護法益にすると言っていたかと。

主査:そうですか。じゃあ本件ではVは自分の物を取り返しただけですが、そういう場合でも、窃盗罪は必ず成立するのですか?

私:いえ、一定の場合は違法性が阻却されると考えます。

主査:じゃああなたは本事案ではどういう事情から違法性が阻却されるかどうかを考えるの?

私:えーっと、そうですね、えー、Aの行為の悪性とか、Vが取り返すまでの時間とか、Vが取り返す際にAの家の物を破壊したか否かとか、そういう具体的な事情ですかね。

主査:うーんとそれはVが急いで取り返す必要があったかとか、Vが取り返す行為の態様とかを考慮するということ?

私:はい、そうです。

主査:つまり、緊急性とか相当性を考慮するということですね?

私:はい、そう考えます。

主査:そうですか。では事例を変えます。よく聞いてくださいね。今度は、AはVに10万円を貸しました。ところが、弁済期が過ぎてもVはなかなか返さないので、AはVに直接弁済するよう会いに行きました。そうすると、Vは「そもそもお前に借りてない」等と言ったので、Aは、Vに対し、「返さないとぶっ殺すぞ」と言ったうえで、慰謝料5万円の上乗せを要求しました。これに畏怖したVはAに金員を交付しました。Aには何罪が成立しますか?

私:1項恐喝罪が成立します。

主査:恐喝罪の構成要件は何ですか?

私:反抗を抑圧するに足りない程度の暴行・脅迫をもって、他人を畏怖させて、財物を交付させることです。

主査:じゃあ本件ではどの範囲で1項恐喝罪が成立しますか?

私:15万円全体について1項恐喝罪が成立します。

主査:10万円についてAは債権を有しているのに、それでも15万円全体について1項恐喝罪が成立するの?

私:はい、権利行使の場面であっても社会通念上相当といえる限度を超えて、暴行や脅迫といった手段を用いるような場合は、もはや適法な権利行使といえないので、15万円全体について犯罪が成立すると思います。

主査:それは違法性阻却の話ですよね?

私:はい、そうです。

主査:本件では構成要件のレベルで何か問題になることはありませんか。

私:構成要件のレベルですか・・・そうですね・・・えーっと

主査:Vは10万円の債務を負っていたわけですよね。それで10万円を支払ったのだから・・・

私:あ、Vには損害がないのではないか、ということが問題になるかと思います。

主査:そうですね。損害がないとも考えられるけど、それでも1項恐喝罪は成立しますか。

私:はい、恐喝罪は個別財産に対する犯罪なので、経済的にみて損害がないといえる場合であっても、現にその10万円を交付している以上、恐喝罪が成立すると思います。

主査:そうですか。それではいかなる場合にも成立するのでしょうか。

私:いえ、やはり違法性が阻却される場合があると考えます。

主査:本件では違法性は阻却されますか?

私:んー、そうですね、やはり慰謝料分の請求は不当ですし、「ぶっ殺す」だなんて脅迫を手段としている点で、違法性は阻却されないと思います。

主査:うーん、じゃあ例えば、Aはすごくお金持ちで10万円を今すぐ返してもらう必要はないのに、脅迫してお金を返してもらったという事情があった場合、この事情はどういうふうに考慮される?

私:そういった事情がある場合ですと、Aにとっては脅迫してまでVからお金を返してもらう必要がないので、違法性阻却を妨げる方向に働く事情になるかと思います。

主査:この場合も緊急性と相当性を考慮するということですね?

私:はい、そう考えます。

主査:それでは、目の前のパネルを裏返してください。

私:はい。

主査:一応読み上げます。Cは「犯行の翌日、Aが「Vをぶっ殺してやる」と言っていた」と証言した。この場合、Cの証言をAに対する公判で証拠として使用できますか。

私:あー、えーっと、伝聞証拠だと思いますので、使用できないかと。

主査:それはなぜですか?

私:えーっと、伝聞証拠か否かは要証事実との関係で決まるのですが、この場合はAの発言の存否が要証事実になるので・・・

主査:(主査、納得していないような顔)ん?どういうこと?

私:えーっと・・・(ここからおそらく5分くらい伝聞証拠該当性をめぐってあれやこれや話したが、自分でもちんぷんかんぷんで主査も厳しい表情)

主査:で、結局本件ではこれは伝聞証拠なの?

私:伝聞証拠だと思います。

主査:そうですか。じゃあ次の事案にいきますね。AとBは別々に起訴されました。同じ裁判官が審理するのだけど、Bは「Aと恐喝した」と自白しています。他方で、Aは犯行を否認しており、弁済を受けただけだと言っています。裁判官は先に自白しているBから審理しようとしています。なにか問題はありますか?

私:Bの審理から不当な心証を抱いてしまう可能性があるという意味でよくないかと。

主査:不当な心証を抱くっていうのは?

私:Aに対して予断を抱いてしまうので、予断排除の観点からよくないかと。

主査:ん?この場合って予断は生じますか?

私:えーっと、あくまで弁論は併合されてないんですよね?

主査:はい、弁論は併合されていません。

私:そうであれば、裁判官は別の証拠調べであれば別の心証形成を行うので、予断排除の観点から事実上の影響が裁判官に対してあるかもしれませんが、別々に心証形成をすれば足りるので、問題はないかと思います。

主査:じゃあ、あなたはこの場合の裁判官の行為は許されると思うの?

私:許される、と思います。

主査:そうですか、じゃあまた事案を変えます。今度はBが先に審理されて、「Bは自分とAが恐喝した」と被告人質問で供述しました。Bに判決が下された後、Aの公判になり、Bは証人尋問の際に「自分一人でやった」と証言しました。あなたが検察官だとして何かできることはありますか。

私:はい、Bに対する審理での供述を裁面調書として証拠調べ請求します。

主査:他に何かできることはありませんかね。

私:えーっと、そうですね、検面調書があれば、検面調書の証拠調べ請求も考えられるかと思います。
主査:そうですよね。ちなみに条文って321条何項でしたっけ。

私:裁面調書が1項1号で、検面調書が1項2号です。

主査:はいそうですね。副査の方から何かありますか?(副査首を振る)それではお疲れ様でした。パネルを裏に戻してご退出ください。

私:ありがとうございました。