平成30年度司法試験予備試験口述試験再現(2日目民事)
主査:それではパネルの事例を読み上げますので、よく聞いてください。なお、金銭的請求については考慮する必要がありません。よろしいですね。
私:はい。
主査:あなたは、Xの代理人となった弁護士Pであるとします。Yに対して請求する際の請求の趣旨はなんですか?
私:被告は、原告に対し、本件土地を明け渡せ、です。
主査:そうですね。訴訟物はなんでしょう?
私:所有権に基づく返還請求権としての土地明け渡し請求権1個です。
主査:1個、そうですね。それでは請求原因はなんでしょうか。一般的な答え方で構いません。
私:X現所有、Y現占有です。
主査:何についての所有・占有ですか?
私:本件土地についてです。
主査:そうですね。では、Xが訴訟提起しました。その後、Yが死亡しました。Xの代理人Pであるあなたは何をすべきですか?Yには訴訟代理人がいないものとします。
私:Yの相続人に訴訟手続きを引き継いでもらいます。
主査:そうですね。ちなみにこの申し立てって何の申し立てっていうか知っていますか?
私:えーっと、うーん、申し立て、申し立てですか、○○の申し立て、で○○に何が入るかってことですよね。うーん。
主査:受継の申し立てっていいますよね。
私:あ、そうですね、そうだそうだ。
主査:じゃあ、Yが訴訟手続中にも建物の建築を続けていたとします。この場合、Pはどういった手段を取れますか。
私:処分禁止の仮処分、でしょうか。
主査:処分禁止の仮処分っていうのは登記請求権とかを保全する場合ですよね。じゃなくて?
私:占有移転禁止の仮処分、でしょうか。
主査:占有移転禁止の仮処分は第三者に占有を移転しちゃう場合ですよね。この場合、Pとしては何をされるのが困るのでしょう?
私:そうですね、建物を建てられるのが困るので、それを差し止めたいです。保全だと仮の地位を定める仮処分があるので、それで建物建築の差し止めを求めます。
主査:まあそうですね。それでは、Pは本件訴訟で勝訴しました。Pは何をしますか。
私:建物を壊すために代替執行の申し立てをして、強制執行を掛けます。
主査:どこの裁判所に?
私:受訴裁判所、ですかね。
主査:受訴裁判所?
私:あ、いや、受訴裁判所またはその土地を管轄する裁判所です。
主査:ん、受訴裁判所またはその土地を管轄する裁判所ってことは、東京の裁判所で勝訴して、土地は大阪にあるって場合は、東京・大阪の両方に申し立てできる?
私:いえ、その土地を管轄する裁判所だけだと思います。
主査:なるほど、じゃあ結局結論は?
私:その土地を管轄する裁判所です。
主査:裁判所っていうのは?
私:第一審だと地方裁判所です。
主査:そうですね。では、パネルを裏返してください。また事例を読み上げますので、よく聞いてください。(事例読み上げ)では、あなたはYの代理人となった弁護士Qであるとします。Qはどのような抗弁を主張することが考えられますか?
私:所有権喪失の抗弁です。
主査:所有権喪失の抗弁っていうのは何による?
私:売買による所有権喪失の抗弁です。
主査:あともう一つくらい何かある?
私:取得時効による所有権喪失の抗弁です。
主査:そうですね。じゃあまず売買の方を聞きますね。QはAY間の売買契約があったことを立証したいのですが、売買契約の契約書がありません。Qどのようにしてこれを立証しますか。
私:えー、例えば振込で支払が行われたのであれば、Yの預金口座から10万円の支払いがあったのと同日にAの預金口座に10万円の振込みがなされている事実を間接事実として立証します。
主査:そうですね。じゃあもし支払いが現金で行われていた場合はどうでしょう?
私:その場合は領収書の交付があるかと思うので、Yが領収書を保管していればそれで立証します。
主査:なるほど。じゃあ取得時効による所有権喪失の抗弁の方に行きましょう。取得時効の抗弁の要件事実はなんですか。
私:20年前の時点で占有していたこと、20年経過後に占有していたこと、時効援用の意思表示をしたこと、です。
主査:20年前の時点での占有っておっしゃいましたが、その時点って自分で選べるのでしたっけ?
私:いえ、実際に占有を開始した時点に限られるので、自分で選択することはできません。
主査:そうですね。じゃあ今度はもう一度Pの立場に戻ってください。Pの立場に立った場合、取得時効の抗弁に対して何を主張しますか。
私:他主占有事情を主張します。
主査:それを主張すると、取得時効の抗弁の要件の何を攻撃できます?
私:取得時効の成立のためには占有開始時点において所有の意思をもっていることが必要であるところ、他主占有事情を主張することで「所有の意思をもって」という要件が満たされなくなります。
主査:そうですね。ちなみに「所有の意思をもって」ってどのように判断するか知っていますか?Yの内心の意思とかも考慮する?
私:いえ、判例は所有の意思について外形的・客観的事実のみから判断するとしています。
主査:そうですね。じゃあ他主占有事情って具体的にどういう事情を主張しますか?一般的な答え方で構いません。
私:固定資産税を支払っていないとか、所有権移転登記をしていないとか、そういった事情を主張します。
主査:本件でYは所有権移転登記をしていないですが、Qの立場からそれは他主占有事情とはいえないという主張をする場合、どういった主張をしますか。
私:本件では、この山間部の地域では登記をしないことが慣習としてあるとのことなので、所有権移転登記をしていないことも所有者として不自然なことではないと主張します。
主査:本件であともう一つくらい事情を上げられませんかね?
私:えーっと、本件では売買代金が10万円ということですので、そんな少額の売買でわざわざ登記費用をかけて登記の移転をしないということもあながち変ではないかと。
主査:そうですか。副査から何かありますか?(副査首を振る)。それでは以上となります。パネルを裏返しておいてください。お疲れ様でした。
私:ありがとうございました。