令和元年司法試験の成績について
成績通知が届きましたので、成績を下記に記載します。
◆成績
民事系:民法A・商法A・民訴A 199.77点(134~148位)
刑事系:刑法A・刑訴法A 139.67点(77~89位)
選択科目(租税法):68.21点(6位)
論文合計:555.05点(28位)
総合得点:1121.35点(26位)
◆感想
事前に模試等を受けていないので順位の肌感覚が分かっていなかったものの、それなりの手応えではあったので200位程度であれば上手くいけばあり得るのではないかと何となく思っていましたが、オールAで総合26位というのは想像していませんでした。望外の結果であり、受験生生活の最後に自分に花を添えられて非常に嬉しく思います。
残念ながら再現答案を残していないので詳細については再現出来ないのですが、おおよそのアウトラインは思い出せそうなので、1科目ずつどのようなことを答案に記載したのかを「雑感」という形で順次このブログに掲載しようと思います(少し時間はかかるかもしれません)。来年以降の受験生の皆さんの参考になれば幸いです。
令和元年司法試験の結果について
合格していました!
2017年1月に始まり2019年5月までずっと働きながら勉強してきましたが、実を結びました。大団円にて終わり嬉しく思います。
取り急ぎ結果のご報告ということで、順位等については後日更新したいと思います。
平成30年度司法試験予備試験口述試験の結果及び感想
結果は121点(72位)でした。参考になればと思い再現も掲載しておきました。
普通に考えれば刑事60民事61ということだと思いますが、刑事59民事62はもしかしたらあり得るのかもしれません(再現を見てのとおり、民事はそれなりにスムーズにいきましたが、そこまで出来がよかったわけでも無いので可能性は低いでしょう)。
刑事の伝聞証拠のところで再現では再現しきれないくらい詰まりまくったので1日目終了後は落ちたかもしれないと思っていたのですが、民事で挽回できていたようでよかったです。
合格した者として何かしらアドバイスが出来るとすれば、直前2週間の期間であまり細かな定義の暗記に注力しすぎないことが重要かと思います。最低限マストで覚えないといけないのは民事の要件事実と刑事の構成要件くらいで、あとは刑事の捜査や公判で多少は細かいことを覚える必要もありますが、口述試験では寧ろ受け答えに現れる思考力を問いたいのだと思いますので、あんまり記憶力に頼りすぎるのもよくないのかなと思います。
あとは予備校曰く「誘導にうまく乗れれば大丈夫、主査に教えを乞うようなつもりで行くとよい」というような話があるかと思いますが、誤導というか意地悪をされるケースもあるわけですし、誘導なのか誤導なのかどうかは自分の判断力を信じるしかありませんので、コアなところの知識は自信をもって言い切れるようにしておくのが重要だと思います。本番はかなり緊張感がありますので、「誘導がきたら乗ろう」と安易に想定して臨むといわゆる泥船に気づかない可能性もありますので、あまり誘導に乗るというのを意識しすぎるのも危険かと思います(当たり前の話ですけどね
口述試験前2週間の準備については、私の場合は辰巳のハンドブックをベースに要件事実は大島本で補強したという感じで、もう少し時間の猶予があれば基本書を読み直して思考の流れを整理できればよかったなという感想です。巷では短答の復習をすればよいというような話もあるみたいですが、費用対効果が悪そうなので、個人的には優先度は下がるかな、という印象です。
あと、信じられないことに、私は初日の朝、家を出る直前まで初日は民事だと思って準備をしていました。よくよく受験票を見ると初日は刑事と書いてあったので、めちゃめちゃ焦りました。口述試験の受験票は記載が分かりづらいので、気をつけてください。合格していたので今となっては笑い話ですが、なかなかシャレにならないので、よくよく確認するようにしましょう。
平成30年度司法試験予備試験口述試験再現(2日目民事)
主査:それではパネルの事例を読み上げますので、よく聞いてください。なお、金銭的請求については考慮する必要がありません。よろしいですね。
私:はい。
主査:あなたは、Xの代理人となった弁護士Pであるとします。Yに対して請求する際の請求の趣旨はなんですか?
私:被告は、原告に対し、本件土地を明け渡せ、です。
主査:そうですね。訴訟物はなんでしょう?
私:所有権に基づく返還請求権としての土地明け渡し請求権1個です。
主査:1個、そうですね。それでは請求原因はなんでしょうか。一般的な答え方で構いません。
私:X現所有、Y現占有です。
主査:何についての所有・占有ですか?
私:本件土地についてです。
主査:そうですね。では、Xが訴訟提起しました。その後、Yが死亡しました。Xの代理人Pであるあなたは何をすべきですか?Yには訴訟代理人がいないものとします。
私:Yの相続人に訴訟手続きを引き継いでもらいます。
主査:そうですね。ちなみにこの申し立てって何の申し立てっていうか知っていますか?
私:えーっと、うーん、申し立て、申し立てですか、○○の申し立て、で○○に何が入るかってことですよね。うーん。
主査:受継の申し立てっていいますよね。
私:あ、そうですね、そうだそうだ。
主査:じゃあ、Yが訴訟手続中にも建物の建築を続けていたとします。この場合、Pはどういった手段を取れますか。
私:処分禁止の仮処分、でしょうか。
主査:処分禁止の仮処分っていうのは登記請求権とかを保全する場合ですよね。じゃなくて?
私:占有移転禁止の仮処分、でしょうか。
主査:占有移転禁止の仮処分は第三者に占有を移転しちゃう場合ですよね。この場合、Pとしては何をされるのが困るのでしょう?
私:そうですね、建物を建てられるのが困るので、それを差し止めたいです。保全だと仮の地位を定める仮処分があるので、それで建物建築の差し止めを求めます。
主査:まあそうですね。それでは、Pは本件訴訟で勝訴しました。Pは何をしますか。
私:建物を壊すために代替執行の申し立てをして、強制執行を掛けます。
主査:どこの裁判所に?
私:受訴裁判所、ですかね。
主査:受訴裁判所?
私:あ、いや、受訴裁判所またはその土地を管轄する裁判所です。
主査:ん、受訴裁判所またはその土地を管轄する裁判所ってことは、東京の裁判所で勝訴して、土地は大阪にあるって場合は、東京・大阪の両方に申し立てできる?
私:いえ、その土地を管轄する裁判所だけだと思います。
主査:なるほど、じゃあ結局結論は?
私:その土地を管轄する裁判所です。
主査:裁判所っていうのは?
私:第一審だと地方裁判所です。
主査:そうですね。では、パネルを裏返してください。また事例を読み上げますので、よく聞いてください。(事例読み上げ)では、あなたはYの代理人となった弁護士Qであるとします。Qはどのような抗弁を主張することが考えられますか?
私:所有権喪失の抗弁です。
主査:所有権喪失の抗弁っていうのは何による?
私:売買による所有権喪失の抗弁です。
主査:あともう一つくらい何かある?
私:取得時効による所有権喪失の抗弁です。
主査:そうですね。じゃあまず売買の方を聞きますね。QはAY間の売買契約があったことを立証したいのですが、売買契約の契約書がありません。Qどのようにしてこれを立証しますか。
私:えー、例えば振込で支払が行われたのであれば、Yの預金口座から10万円の支払いがあったのと同日にAの預金口座に10万円の振込みがなされている事実を間接事実として立証します。
主査:そうですね。じゃあもし支払いが現金で行われていた場合はどうでしょう?
私:その場合は領収書の交付があるかと思うので、Yが領収書を保管していればそれで立証します。
主査:なるほど。じゃあ取得時効による所有権喪失の抗弁の方に行きましょう。取得時効の抗弁の要件事実はなんですか。
私:20年前の時点で占有していたこと、20年経過後に占有していたこと、時効援用の意思表示をしたこと、です。
主査:20年前の時点での占有っておっしゃいましたが、その時点って自分で選べるのでしたっけ?
私:いえ、実際に占有を開始した時点に限られるので、自分で選択することはできません。
主査:そうですね。じゃあ今度はもう一度Pの立場に戻ってください。Pの立場に立った場合、取得時効の抗弁に対して何を主張しますか。
私:他主占有事情を主張します。
主査:それを主張すると、取得時効の抗弁の要件の何を攻撃できます?
私:取得時効の成立のためには占有開始時点において所有の意思をもっていることが必要であるところ、他主占有事情を主張することで「所有の意思をもって」という要件が満たされなくなります。
主査:そうですね。ちなみに「所有の意思をもって」ってどのように判断するか知っていますか?Yの内心の意思とかも考慮する?
私:いえ、判例は所有の意思について外形的・客観的事実のみから判断するとしています。
主査:そうですね。じゃあ他主占有事情って具体的にどういう事情を主張しますか?一般的な答え方で構いません。
私:固定資産税を支払っていないとか、所有権移転登記をしていないとか、そういった事情を主張します。
主査:本件でYは所有権移転登記をしていないですが、Qの立場からそれは他主占有事情とはいえないという主張をする場合、どういった主張をしますか。
私:本件では、この山間部の地域では登記をしないことが慣習としてあるとのことなので、所有権移転登記をしていないことも所有者として不自然なことではないと主張します。
主査:本件であともう一つくらい事情を上げられませんかね?
私:えーっと、本件では売買代金が10万円ということですので、そんな少額の売買でわざわざ登記費用をかけて登記の移転をしないということもあながち変ではないかと。
主査:そうですか。副査から何かありますか?(副査首を振る)。それでは以上となります。パネルを裏返しておいてください。お疲れ様でした。
私:ありがとうございました。
平成30年度司法試験予備試験口述試験再現(1日目刑事)
主査:それでは事例を読み上げますから、よく聞いてください。Aが、Vの自転車を見つけて鍵を壊して盗みました。そして、Aは自分の家の庭にVの自転車を放置しました。翌日、VはたまたまAの庭に自分の自転車があったことに気づき、勝手に持ち帰りました。この場合Vには何らかの犯罪が成立しますか?
私:窃盗罪が成立します。
主査:窃盗罪の構成要件は何ですか。
私:他人の財物を窃取したこと。不法領得の意思。そして故意・因果関係が必要です。
主査:Vは自分の物を取り返しただけなのになんで窃盗罪が成立するの?
私:窃盗罪は現に存在する平穏な占有自体を保護法益とする犯罪であるため、仮に自己の所有物であっても、窃盗罪の成立は否定されません。
主査:それって条文に根拠があるっけ?
私:はい、刑法242条です。
主査:あなたは「平穏な占有」とおっしゃいましたけど、窃盗罪の保護法益は「平穏な占有」なんですか?
私:あ、えーっと、そうですね、「平穏な」というのは不要で、「事実上の占有」ということかと思います。
主査:じゃあ、判例は窃盗罪の保護法益についてどう言っているか、知っていますか?
私:判例も同様に「事実上の占有」を保護法益にすると言っていたかと。
主査:そうですか。じゃあ本件ではVは自分の物を取り返しただけですが、そういう場合でも、窃盗罪は必ず成立するのですか?
私:いえ、一定の場合は違法性が阻却されると考えます。
主査:じゃああなたは本事案ではどういう事情から違法性が阻却されるかどうかを考えるの?
私:えーっと、そうですね、えー、Aの行為の悪性とか、Vが取り返すまでの時間とか、Vが取り返す際にAの家の物を破壊したか否かとか、そういう具体的な事情ですかね。
主査:うーんとそれはVが急いで取り返す必要があったかとか、Vが取り返す行為の態様とかを考慮するということ?
私:はい、そうです。
主査:つまり、緊急性とか相当性を考慮するということですね?
私:はい、そう考えます。
主査:そうですか。では事例を変えます。よく聞いてくださいね。今度は、AはVに10万円を貸しました。ところが、弁済期が過ぎてもVはなかなか返さないので、AはVに直接弁済するよう会いに行きました。そうすると、Vは「そもそもお前に借りてない」等と言ったので、Aは、Vに対し、「返さないとぶっ殺すぞ」と言ったうえで、慰謝料5万円の上乗せを要求しました。これに畏怖したVはAに金員を交付しました。Aには何罪が成立しますか?
私:1項恐喝罪が成立します。
主査:恐喝罪の構成要件は何ですか?
私:反抗を抑圧するに足りない程度の暴行・脅迫をもって、他人を畏怖させて、財物を交付させることです。
主査:じゃあ本件ではどの範囲で1項恐喝罪が成立しますか?
私:15万円全体について1項恐喝罪が成立します。
主査:10万円についてAは債権を有しているのに、それでも15万円全体について1項恐喝罪が成立するの?
私:はい、権利行使の場面であっても社会通念上相当といえる限度を超えて、暴行や脅迫といった手段を用いるような場合は、もはや適法な権利行使といえないので、15万円全体について犯罪が成立すると思います。
主査:それは違法性阻却の話ですよね?
私:はい、そうです。
主査:本件では構成要件のレベルで何か問題になることはありませんか。
私:構成要件のレベルですか・・・そうですね・・・えーっと
主査:Vは10万円の債務を負っていたわけですよね。それで10万円を支払ったのだから・・・
私:あ、Vには損害がないのではないか、ということが問題になるかと思います。
主査:そうですね。損害がないとも考えられるけど、それでも1項恐喝罪は成立しますか。
私:はい、恐喝罪は個別財産に対する犯罪なので、経済的にみて損害がないといえる場合であっても、現にその10万円を交付している以上、恐喝罪が成立すると思います。
主査:そうですか。それではいかなる場合にも成立するのでしょうか。
私:いえ、やはり違法性が阻却される場合があると考えます。
主査:本件では違法性は阻却されますか?
私:んー、そうですね、やはり慰謝料分の請求は不当ですし、「ぶっ殺す」だなんて脅迫を手段としている点で、違法性は阻却されないと思います。
主査:うーん、じゃあ例えば、Aはすごくお金持ちで10万円を今すぐ返してもらう必要はないのに、脅迫してお金を返してもらったという事情があった場合、この事情はどういうふうに考慮される?
私:そういった事情がある場合ですと、Aにとっては脅迫してまでVからお金を返してもらう必要がないので、違法性阻却を妨げる方向に働く事情になるかと思います。
主査:この場合も緊急性と相当性を考慮するということですね?
私:はい、そう考えます。
主査:それでは、目の前のパネルを裏返してください。
私:はい。
主査:一応読み上げます。Cは「犯行の翌日、Aが「Vをぶっ殺してやる」と言っていた」と証言した。この場合、Cの証言をAに対する公判で証拠として使用できますか。
私:あー、えーっと、伝聞証拠だと思いますので、使用できないかと。
主査:それはなぜですか?
私:えーっと、伝聞証拠か否かは要証事実との関係で決まるのですが、この場合はAの発言の存否が要証事実になるので・・・
主査:(主査、納得していないような顔)ん?どういうこと?
私:えーっと・・・(ここからおそらく5分くらい伝聞証拠該当性をめぐってあれやこれや話したが、自分でもちんぷんかんぷんで主査も厳しい表情)
主査:で、結局本件ではこれは伝聞証拠なの?
私:伝聞証拠だと思います。
主査:そうですか。じゃあ次の事案にいきますね。AとBは別々に起訴されました。同じ裁判官が審理するのだけど、Bは「Aと恐喝した」と自白しています。他方で、Aは犯行を否認しており、弁済を受けただけだと言っています。裁判官は先に自白しているBから審理しようとしています。なにか問題はありますか?
私:Bの審理から不当な心証を抱いてしまう可能性があるという意味でよくないかと。
主査:不当な心証を抱くっていうのは?
私:Aに対して予断を抱いてしまうので、予断排除の観点からよくないかと。
主査:ん?この場合って予断は生じますか?
私:えーっと、あくまで弁論は併合されてないんですよね?
主査:はい、弁論は併合されていません。
私:そうであれば、裁判官は別の証拠調べであれば別の心証形成を行うので、予断排除の観点から事実上の影響が裁判官に対してあるかもしれませんが、別々に心証形成をすれば足りるので、問題はないかと思います。
主査:じゃあ、あなたはこの場合の裁判官の行為は許されると思うの?
私:許される、と思います。
主査:そうですか、じゃあまた事案を変えます。今度はBが先に審理されて、「Bは自分とAが恐喝した」と被告人質問で供述しました。Bに判決が下された後、Aの公判になり、Bは証人尋問の際に「自分一人でやった」と証言しました。あなたが検察官だとして何かできることはありますか。
私:はい、Bに対する審理での供述を裁面調書として証拠調べ請求します。
主査:他に何かできることはありませんかね。
私:えーっと、そうですね、検面調書があれば、検面調書の証拠調べ請求も考えられるかと思います。
主査:そうですよね。ちなみに条文って321条何項でしたっけ。
私:裁面調書が1項1号で、検面調書が1項2号です。
主査:はいそうですね。副査の方から何かありますか?(副査首を振る)それではお疲れ様でした。パネルを裏に戻してご退出ください。
私:ありがとうございました。